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「AERA」2022年2月28日号に澤田大樹さんの著者インタビュー記事を執筆

更新日:2022年5月9日


「AERA」2022年2月28号の「この人のこの本」にTBSラジオ記者、澤田大樹さんのインタビュー記事を執筆しました。


澤田さんは、昨年12月に初著書『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』(亜紀書房)を出されました。執筆のきっかけから、本に込めた思いをうかがいました。


記事は、AERAdotでも読むこともできます。



私が澤田さんを知ったのは、TBSラジオで荻上チキさんと南部広美さんがパーソナリティを務める「Session」でした。まだ夜に放送していた頃なので、森喜朗氏の会見より前のことです。政権におもねる報道がTVで見かけることが多くなり、世の中の空気が重く、ささやかな暮らしが圧迫されるように苦しく感じていたとき、久しぶりにラジオを聴いていたら、「Session」や荒川強啓さんがパーソナリティを務めていた「デイ・キャッチ」に、ほっとする自分がいました。報道を通じて私が知りたかったこと、聞きたかったことが流れていたからです。


そんな番組のなかで、政治のことを分かりやすく解説してくれる人がいるなぁ、と、その方が出てくるとよく耳を傾けるようになりました。そして、澤田大樹という名前が強くインプットされたのが、TBSラジオで唯一の専業記者と知ったときでした。私がいる紙媒体と音声映像メディアとは組織のあり方は違いますが、全国ネットメディア局でそんなことがあるのだろか、と本当に驚いたのです。私が仕事をしている出版メディアで「記者」といえば、よほどの小さな媒体の編集部でなければ、複数いたからです。それから、澤田さんに興味がわき、ラジオに登場するたびに、「あ、澤田さんだ」と聞き入るようになりました。


ここ10年のおかしいとしか思えない政治の世界は、にわかウォッチャーには、わかりにくいことばかりです。何が起きたのか、ということだけでなく、なぜ起きたのか、どんな背景があるのか、という解説がなければ、私はうまく理解することができませんでした。澤田さんは、その「なぜ起きたのか、どんな背景があるのか」ということまで、わかりやすく教えてくれました。澤田さんが政治の世界を身近なものにしてくれたのです。


新しい人をその世界に招き入れるとき、入り口のハードルを下げ、案内をしてくれる存在は、とても重要です。私が雑誌、主に女性向けの実用誌で執筆してきたのも、その役割を果たすものでした。とくに医学健康テーマの記事では、難しい医学用語をやさしくかみ砕きながら、原因と症状、治療法、セルフケアを説明し、読者の暮らしぶりを想像しながら、少しでも役に立つ原稿になるように心がけてきました。澤田さんの報道には、私の執筆姿勢と重なるものがあるのではないかと、とても共鳴するものを感じたのです。


報道と一口に言っても、どこに目線を向けるかで伝え方は異なります。ネットニュースが主流になり、数秒で読者の目を止めてもらうために、センセーショナルな見出しや記事が多くなっています。一言でズバリと言い切ってくれる記事の書き方が喜ばれてもいます。でも、生きるために必要だったり、本当に大切な情報は、大声で叫ばれるところにはなかったりします。そして、なかには「そんなの当たり前すぎる」と思うような結論にたどりつく記事もあります。


世の中にそうそう目新しいものはありません。日々の流れのなかで少しずつ変わっていくものです。そして、時間の波に揉まれても生き残っていく情報があります。その点と点を結びつけたとき、本当の意味での今、生きる人たちに役に立つ情報になっていくのです。澤田さんは著書のなかで、庶民としての感覚を大切にしながら、「今起きている出来事は、過去と地続きだ。ラジオで報道するにあたり、私は点と点を結び線として伝えることを意識的に行っている」と書いています。そのことを意識して報道している人は、じつはそう多くありません。メディアの端っこにいる辺境ライターとして、さまざまな編集部を経験してきた私の感覚でしかありませんが、私的な存在として生きている「日々の暮らし」から切り離された「仕事」の匂いが強い報道も少なくはないと思っています。


そんな情報の洪水に日々、翻弄されながら、澤田さんが伝える情報は、私を励まし、支えてくれるものになっているのです。











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