河尻さんは、デザイナーの石岡瑛子さんの評伝『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』(朝日新聞出版)を昨年11月末に発表。公式サイトはこちら。
門間さんは、ミュージシャンの細野晴臣さんの評伝『細野晴臣 彼らの時代』(文藝春秋)を昨年12月に発表しました。
「AERA」に「この人この本」という著者インタビューのページがあり、私がお二人の取材を河尻さん、門間さんの順番で立て続けに担当しました。
河尻さんのあと、門間さんに取材するなかで、「お二人で対談したら面白いのでは?」という考えがムクムクと湧てしまいました。とはいえ、商業的な媒体では難しい企画だろうし、もっと気楽な形で本について語ってもらう方法はないかなと思っていました。そこに、ちょうど降って人気が盛り上がっていたのがclubhouseです。
この対談は、お酒の席ででも思いついたまま語るようなclubhouseのノリがぴったりだなと思い、お声がけしたところ、二つ返事で了解していただき、25日に決行の運びになりました。
私がお二人に語ってもらいたいと考えた理由は、あれこれあります。
AERAの担当編集者さんからお声がけいただいた順番で、たまたま続いた著者インタビューだったのですが、まず本を読んで私が思ったのが、「ん?なんか似てない?」ということでした。とくに感じたのが、石岡さん、細野さんに対する距離感と描き方の誠実さでした。
「ノンフィクションを書く」「評伝を書く」ことにおいては、当たり前のことなのですが、著者によっては、自分の思いや考えが強く出てしまい、読者からすると、どこか物足りなかったり、著者の熱気がすごすぎて、逆にのめり込めないということが出てきます。とくに、書くことが本業のライターだと、その罠に陥りがちなのですが、お二人は編集者としての経験も豊富なだけに、情報の取捨選択がうまいなぁと感じたのです。
石岡さんも細野さんも、若い頃から活躍され、作品もインタビューなどの資料も豊富にあるだけに、評伝の執筆では、情報の取捨選択と精査に相当な時間がかかったはずです。大量の情報を整理して、なおかつ最後まで読ませる構成力と、読みやすい文章力を持って300ページ以上の本を書くのは、並大抵の力量ではないと思いました。
お二人ともこれが初めての著書ですが、そうとは思えない練り上げられた内容になっているのは、長年の編集者、執筆者として、誠実に仕事を重ねてきたからでしょう。そういう職人的な作り手に会うと、私はワクワクしてしまうのです。
私がお二人に語ってもらいたいと考えた項目を挙げると、以下にようになるでしょうか。
ジャンルは違っても、石岡瑛子さんも細野晴臣さんも、時代を切り拓いたキーパーソンであること。
お二人がまず注目された1960〜1980年代は、日本のサブカルチャーの礎が築かれた時代でもあること。
今、1970年代から80年代のバブル期以前までの文化が再評価されていることから、石岡さんと細野さんの人生をなぞることで、「なぜ今、この二人なのか」を探るヒントが得られるのではないか。
河尻さんと門間さんは同じ1974年生まれで、大学も同じ早稲田大学政治経済学部を卒業していること(学科は違いました)。同じ時代を生きてきた二人が、この時期に評伝を発表し、注目されていることの意味。本の企画が立ち上がったのは、河尻さんが5年目、門間さんが8年前と、時期は違うのですが、昨年末に発行になったことも、絶好のタイミングだったのでは?と思っています。
河尻さん、門間さんのどちらにも、初めての著書だったこと。これまでライターやエディター、イベントのプランナーなど、ある意味、業界を支える裏方的な仕事を経ての執筆だからだと思うのですが、『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』も『細野晴臣と彼らの時代』も、構成と内容のバランスがとてもいいのです。
5番の結果、2冊の本が、日本のポップカルチャーの基礎知識を得られるのにぴったりな歴史書の役割も果たすことになっていること。
などなど、簡単に言えば、私のおもしろアンテナのカンが働いたのです。
が、当日うまくいくかどうかは、ドキドキしております。障壁の一つは、門間さんがなんとAndroidユーザーだったこと。「そうだったー!clubhouseはiOSのアプリだったー。これで頓挫か?いやいや、私のiPadで対応できないか」などと、脳内で解決策を探してぐるぐるしましたが、解決の道は見つかるものです。門間さんのご家族がiPadをお持ちだったのです。
対談の決行は、時間帯がつながりにくいゴールデンタイム。うまく接続できるのだろうか、という不安もありますが、「でもまぁ、なんとなるだろう」というポンコツな私らしく、かなりアバウトな進行にもなると思います。そんな対談イベントですが、ぜひRoomをのぞいてみてください。打ち合わせの3人ZOOM会議で、「あ、その話は当日まで取っておいてーー!」という話がバンバン出ましたから(笑)
[プロフィール]
河尻亨一(かわじり・こういち)
編集者。1974年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。美大予備校講師を経て、マドラ出版入社。雑誌「広告批評」を手がける。現在は、取材・執筆、イベント・企業コンテンツの企画制作など、広告とジャーナリズムをつなぐ活動を展開。訳書に『CREATIVE SUPERPOWERS(クリエイティブ・スーパーパワーズ』(左右社)がある。
門間雄介(もんま・ゆうすけ)
編集者・ライター。1974年、埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。「ぴあ」「ロッキング・オン」で雑誌などの編集を手がけ、「CUT」副編集長を経て、2007年に独立。フリーランスとして雑誌・書籍の編集に携わる。主なものに伊坂幸太郎×山下敦弘『実験4号』、二階堂ふみ『アダルト』、『細野観光1969−2019』など。
Comments