去年の夏からほぼ半年かけて制作してきたノンフィクション『私の夢まで、会いに来てくれた 3・11 亡き人とのそれから』(金菱清ゼミナール編/朝日新聞出版発行)が2月20日、発行になります。Amazonでは、すでに予約販売が開始しております。
この本のテーマは「被災者遺族が見る亡くなった人の夢」です。金菱ゼミは東日本大震災直後から、被災地に住む市井の人たちの声を集める「震災の記録プロジェクト」を続けてきました。
昨年、幽霊を見るタクシー運転手さんにまつわる論文を収録した『呼び覚まされる霊性の震災学』(新曜社)を出したゼミでもあり、メディアで話題になったので、ご存じの方もいるかと思います。
その金菱ゼミの3年生が中心になって、昨年、被災者遺族の方たちがどんな夢を見ているのか調査しました。その体験談をまとめた記録集です。27編の体験談が収録されています。
論文ではないので、学生さんたちが聞いたままの体験談を収録しています。遺族の方たちに、どんな亡くなり方をしたのか、今、どんな心情なのかを取材した記事や本はたくさん出ていますが、この本は、遺された遺族が祖父母や父母、お子さん、友人という亡き人と震災から今も、夢を通してどのように交流しているか、を、宮城県在住の若い素直な目を持っている大学生を通して伺ったところが、既刊本と大きく違うところです。
この本には、ジャーナリスティックな視点や心理学的な解説はありません。ただただ、今、遺された方たちが、どういう心境にあり、どういう形で亡き人との想いを抱えながら生きているか、しか書かれていません。ですから、ある意味、とても地味な本です。でも、おせっかいになりがちな書籍において、そこにあることだけをすくい取った貴重なノンフィクションでもあると思っています。また、現在、宮城県で学ぶ学生さんたちが、地元の人間として発信している点もこの本の特徴です。
東日本大震災が対象ではあるのですが、この本に描かれているお一人お一人の物語は、誰もが共感できることばかりですし、人を慈しむ気持ちの強さには、心の奥底から揺さぶられるものがあります。なかには、読んでいてとてもつらい話もあるのですが、読後は不思議な透明感のある美しさも感じる本だと思います。
一人でも多くの方に手に取ってもらいたいですし、ぜひ周りの方にもすすめていただきたいなぁと思っています。とくに、今、さまざまなつらさを抱えている方には、ある種の慰めにもなる本なのでは、とも思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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